海苔やアサリなど海産物が有名な富津ですが、バカガイも地元の人には馴染み深いのではないでしょうか?
バカガイの貝殻を剥き、食用に加工したものを青柳(アオヤギ)と呼びますが、江戸前寿司では欠かせないネタとして親しまれていますね。なんと富津は、近くは木更津、遠くは愛知・三重・北海道からのバカガイの一大集積地で、修練された技術でその加工を一手に引き受けています。
かつて3000人いたと言われている「剥き子(むきこ)」と呼ばれる作業者の数はどんどん減ってきているようですが、富津で加工ができなければ江戸前寿司で青柳が食べられなくなると言われるほど貴重な事業なのです。全国を代表するような産業を見ないわけにはいかないと富津っ子取材班は富津市富津の礒崎水産さんにご協力いただき加工場をみせていただけることになりました。
礒崎水産 加工場見学
富津小学校のすぐ隣に礒崎水産があります。
今回ご案内いただいた礒崎水産の代表・礒崎寛さんに基本的な剥き方をお聞きしました。
バカガイを上からみると三角形になっていますが二等辺ではなく、長い辺と短い辺があります
この長い辺の方に口があるようで、こちらから包丁を入れると開きやすいそうです。貝を開いたら殻を取ってしまう人とそのまま進める人がいるとか。
続いて、大小2つある貝柱(通称ホシと呼ばれます)を切り離します。
「包丁」と呼ばれる貝剥き専用の刃物を使っているそうですが、アサリよりも大きなバカガイ用のものは近くの砂山金三郎商店で手に入れているとのこと。かなり珍しい形のようで剥きやすく遠くの業者が買い求めることもあるそうです。
ちなみに、大きく形のよい身は殻を取り、トレーに乗せられた剥き身として市場に並ぶそうです。綺麗ですねぇ。
ほんのり赤く見えるのは、バカガイの卵だとか。
このころが身がぷっくりして一番おいしいそうですよ~
自宅でバカガイを剥く独自の配達スタイル
次にご自宅でバカガイを剥いている剥き子さんがいらっしゃると聞き連れていっていただきました。かつては加工場に剥き子さんを集めて行う方法が一般的でしたが、富津の最古参の業者の1軒が剥き子さん宅へとれたバカガイを配達し剥き終わった頃に回収する方法を始め、現在のところ剥き子さんは自宅で作業するのが一般的になったそうです。
普段は農業もされているそうですが、この時期になると剥き子さんも兼任です。
写真撮らせてくださーいとお話しすると、「ワタシはいいよぉ〜」なんて照れているカワイイお母さん(笑)
昔は富津地域はもちろん大貫などでもまちなかでバカガイを剥く姿を見ていました。剥いたバカガイの殻を畑にまくといいなんて話もあるようですね。
海のすぐ近くだというので、少し景色を眺めてから加工場へ戻ります。
身から足を離して舌切へ
先ほど貝から取り出した剥き身から、さらに身とワタの部分を取り除いて足(舌ともいいます)の部分だけを取り出します
この足だけの状態を舌切と呼ぶそうですが、包丁ではなく先ほど取った貝殻を使ってこそぎ取るようにすると綺麗に取れるそうです。
撮影にご協力いただいたお母さん達を記念にパチリ!
江戸前の青柳を支える職人さんです!
剥き子さんの熟練の技をビデオ撮影させていただきました!
青柳尽くしのお料理をご馳走になることに!
なんと、礒崎さんのご好意で青柳をふんだんに使った代表の奥様の手料理をご紹介していただけることになりました!
「はしらめし」ご飯に青柳の小柱をまぜこんだものですが、プリプリとした小柱の食感がたまりません
こちらは「炊き込みご飯」のおにぎり。小柱に火が入っているためよりダシがでていてご飯がうまい〜。
おすすめ&一番人気という「なめさんが」舌切と味噌・ネギを一緒に叩いたものですが、しっとりとした舌触りに青柳のコリコリ感とお味噌のコクでなんとも言えない美味。どうしましょうご飯が止まらない(笑)
酒飲みにもたまらないですねコレは!
お次は揚げ物2種。左が「天ぷら(磯辺揚げ)」に右が「フライ」です。青柳自体に割りとしっかりした味がするので揚げ物にしても旨味が消えません!
舌切と小柱のお刺身〜。結局は生でもめちゃくちゃ旨いんです(笑)
さらに、
お味噌汁!アサリの味噌汁があるくらいだから青柳だって旨いんです。良い出汁がでてて温まる〜
まさかの洋食まで!ペペロンチーノ風のシンプルな味付けでもしっかり存在感を出す青柳の食感と旨味。和食に限らないんですね〜。
こんなに充実の青柳フルコース。感動しちゃいました。礒崎水産さんは加工業ですので普段お食事は出していないんですがお店できるんじゃないですか〜なんて話がでるほど!
奥様本当にありがとうございました!!!(感涙)
バカガイ加工と青柳の美味しさを発信する礒崎さん
一時期の乱獲などにより富津でのバカガイの水揚げ自体がかなり減ってしまって、現在では木更津や県外産のものも多いそうです。また貝剥きの作業は生ものを扱いますし、若い人があまりやりたがらないと言いますから剥き子さんの成り手も減っているのが心配だとか。
今回取材をしてみると、長年バカガイを剥いてきたお母さん達は貝剥きが楽しいと口々に言っていましたし美味しく食べてもらえることにやりがいも感じているそうです。そして、お刺身でも、バリエーション豊富なメニューでも抜群に美味しい青柳がもっと日の目を見てもいいのでは・・・と感じました。
地元でももっと青柳をいただけるお店が増えてくれると嬉しいですね〜。
富津のアオヤギ専門業者 礒崎水産
住所: 〒293-0021 富津市富津394番地
電話: 0439-87-4460