こんにちは、お酒は体質的にほとんど飲めない管理人です。
以前から竹岡にこだわりの手作業で伝統の味を守り続けている酒蔵があるという話を伺っていたのですが、縁あってまさに今が最盛期の仕込み作業を見学させていただけることになりました。
お邪魔したのは富津市竹岡の「和蔵酒造 竹岡蔵」。1874(明治7)年創業ですから140年続く老舗の酒蔵です。
関東大震災で崩れたところもあるそうですが、基本的には創業当時からの建物だそうで非常に趣がありました。
一般の見学も受け入れているそうで(要予約)、日本酒の知識ゼロの管理人に非常に分かりやすく工程を説明してくださいました。和蔵酒造ではよくある観光バスが停まるような大規模な見学は受け入れておらず、多くても10人強のグループにとても詳しく解説してくれます。
本来、職人気質の酒蔵の人はあまり外部に蔵を開放したがらないそうですが、池田さんは日本酒がどうやって作られているかをしっかり見てもらって、日本酒に親しんで欲しいとこういった見学を受け入れているそうです。また、この日は高級酒の大吟醸の仕込みもあり、職人さんもピリピリする時期にも関わらず見せていただきました!
まず見せていただいたのは、巨大な容器で大量の酒米を蒸す工程。
容器に書いてある「聖泉」こそがこの酒蔵で作られる銘柄です。
ここで蒸されたお米は「麹」「酒母」「もろみ」の全てに利用されます。
もろみに投入する酒米をベルトコンベアーで移動しながら下から風をあてて粗熱をとる機械です。
ベルトコンベアーで運ばれてくる蒸米を、職人さん達が手際よくほぐしていきます。
ほぐされたお米が、下からでてくると別の職人さんが布にまとめて荷台に乗せていきます。手際よく行われる作業はチームワークの重要性がうかがわれます。
お米が運ばれてきたのは仕込み部屋。もろみが入っているタンクは本当に巨大なサイズなのでタンクの半分くらいの高さまで足場が組んであり、ハシゴから登って作業します。
運ばれてきた蒸米を上にいる職人に渡し、手早くタンクの中に投入します。これも惚れぼれするような手際のよさです。
足場の上に登らせていただきタンクの中を覗かせていただきました。部屋のなかはすでにフルーツのようないい香りがしていました。
こちらは別の部屋で貯蔵庫になっている場所です。仕込みの時期の異なるもろみが入ったタンクがいくつも設置されていました。
さて、手際よく進む仕込み作業でゆっくり辺りを見回す時間もありませんが、よく見るとやはり歴史のある建物だけあって、ただの通路も非常にアジのある雰囲気です。
こちらは、お酒造りにかかせないお水を貯めているところ。敷地内にある地下100メール以上も掘った深井戸から引いている水は、口当たりのなめらかな良質のお水だそうです。
さて、作業は再び窯から蒸しあがったお米がベルトコンベアに移動しました。お米をほぐす様子はさきほどと同じようですが、今度は職人さんが小さな容器をお米に振っているようです。
これは種麹(たねこうじ)と呼ばれ、蒸米から麹をつくるためにふりかける麹菌なのです。麹菌のもとってこんな粉末状だったんですね・・・。黄緑色をしているのも初めて知りました!
麹菌を繁殖させるための専用の部屋である麹室(むろ)という場所に移動しました。ここは30度くらいに保たれていて冬でも暖かい(というか暑い)です。麹菌が米のデンプン質をブドウ糖へと分解していきます。
運ばれてきたばかりのお米は盛り上げられ、布をかけられました。ここでも温度管理が重要なようで常に温度計をお米に挿して確認していました。
こちらは、別の日に麹室に入ったお米。先ほど運ばれてきたものに比べ明らかに白っぽくなっています。
さて、今度は酒母を製造している部屋を見せていただきました。
仕込みの日によって酒母の状態(特に泡立ち方)が全然違いますね。
酒母とは、蒸米・麹・仕込み水を用いて優良な酵母を培養したものでアルコール発酵を順調に促すために必要な要素です。
やはり温度管理が重要でこの日は青いビニールシートのようなものを小型のタンクに被せて温めていました。
こちらの容器に入っているのが酵母です。このなかになんと2億個ほど入っているそうで、タンクのなかで更に爆発的に増殖し、天文学的な数になるのだとか。
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他にもいくつか設備を見せていただきました。
こちらは巨大な精米機。酒蔵で自家製米しているところも珍しいのだそうですが、地元産の酒米を使いたいため玄米のまま届くものはこちらで精米しているのだとか。
玄米と精米後のサンプル。大吟醸の場合は精米で60%も削るため白いお米はかなり小さな粒となります。ただ、このようにしっかり精米することで余計な雑味のない美味しいお酒ができあがるのです。和蔵酒造では地元産にこだわって千葉県産の「総の舞」「ふさこがね」を使用しているそうです。
こちらはもろみから清酒を絞りとる圧搾機です。大量の袋が重なっておりここにもろみを入れて圧をかけると酒が絞り出され、袋の中には酒粕が残ります。
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この日、朝の8時から2時間ほど作業を見させていただきましたが、朝の5時位から仕込み作業は始まっていたそうです。また、夕方にも作業があり、大吟醸のような高級酒の仕込みには寝ずの番をするそうです。日にちをずらしてほぼ毎日仕込みがあり、お休みもほとんどないためかなり厳しいお仕事だと思いますが、繊細な温度管理や、吸水率の見極めなどまさに職人技とよばれる貴重な職能でもあると思います。
日本酒業界でもやはり後継者問題には悩まされているそうで、つきっきりの厳しい作業環境に耐えられずなかなか仕事を続けてくれる人がいないそうです。
その中でも和蔵酒造さんでは、日本酒造りの面白さに気づきすでに10年以上の経験を得て一人前の職人として成長している若手が育っているそうで、池田さんもとても頼もしいと胸を張っていたのが印象的でした。
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[和蔵酒造 竹岡蔵|上総の蔵元|千葉の房総地酒(日本酒)のことなら千葉県酒造組合]
住所: | 富津市竹岡1 |
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電話: | 0439-67-0027 |
竹岡蔵には販売所がありませんが、見学で訪れた方でご希望の場合は販売もされているそうです。見学は予約が必要で多くても10人ちょっとくらいしか入れないそうですが、めったにみれない職人さんの仕込み作業はとても興味深く、丁寧に解説していただけるので日本酒への理解が深まりとてもオススメです。
ちなみに、2月7,8日にかなやベース主催でそば打ち体験と酒蔵体験・試飲ツアーのイベントがあるそうです。記事を読んですぐにでも行ってみたいという方はぜひチェックしてみてください(人数制限ありますのでお早めに!)。
金谷日本酒会vol.2 1泊2日のそば打ち体験と酒蔵ツアー
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