2014年に木更津市築地にオープンした大型ショッピングセンター「イオンモール木更津」にNOZY COFFEE 木更津店がオープンしました。三宿にある1号店はこだわりのコーヒー店だと、すでにコーヒー通に話題になっていたため期待とともに迎え入れられました。”富津っ子”としてはオーナーの能城政隆氏が富津市出身との情報を聞きつけ、是非お話を聞いてみたいと考えていたのですが、ついに機会を設ける事ができました!
インタビューはNOZY COFFEE 木更津店にて和やかに行われました。
1987年千葉県富津市生まれ。28歳。
小学校から木更津高校まで野球一筋。慶應義塾大学在学中にコーヒーに目覚め、湘南台に期間限定のコーヒースタンド「のーじー珈琲」を開店。エチオピアを訪れた際、豆が本来持っている味や特徴を楽しむ、<シングルオリジンコーヒー>という文化の存在に触れ、世界中にこの文化を浸透させコーヒーに関わる人を豊かにすることが夢。2010年に三宿店、2013年に2店舗目「THE ROASTERY BY NOZY COFFEE」を原宿・神宮前にOPEN。2014年には念願の地元木更津のイオンモールに「NOZY COFFEE 木更津店」をオープンさせた。
http://www.nozycoffee.jp/index2.php
地元富津では野球少年
富津っ子(以下富津): 富津のご出身だと聞いていたのですが、どのあたりなんですか?
能城政隆氏(以下能城): 天羽の方です。地名で言うと桜井ですね。
富津: 子ども時代はどのように過ごしたんですか?
能城: 小学校からずっと野球をやっていました。中2からは地元のシニアリーグである君津シニアに入り野球漬けの毎日でした。木更津高校でも野球部に入り本気で甲子園を目指すいわゆる高校球児で頑張っていたのですが1回戦で負けてしまうなど、あまり結果は残せませんでした。
大学でも野球をやりたいと思っていたので、先輩などの影響から漠然と六大学の何処かがいいかなと思っていました。
富津: 六大学といっても早稲田・慶応・東大など、受験は結構大変だったんじゃないですか?
能城: そうですね。でも、野球を中心に考えていましたので、教科をなるべく絞って勉強するようにしていて理系が得意だったので、数学・英語とあと理科をもう1科目頑張って、それ以外の教科は赤点ギリギリ超えるくらいでした(笑)
受験は願書提出締め切り期限ギリギリに慶應義塾大学で数学と小論文だけで受験できる事を知って、特に数学が得意だったので記念に受けたら受かることができました。
富津: 慶應義塾大学に入ってからも野球を続けられたんですか?
能城: 高校野球ではチームとしても結果を残せず、個人的にもレギュラーになれなかったりしたので長い間野球一筋で頑張ってきましたが、ここで一区切りして新しいことをしようと考えました。
大学に入って衝撃を受けたのが、周りにとても優秀な人間が多かったんです。世の中を変えてやろうとか、教育を変えていくとか、昔からちゃんと考えてきている人と出会って、自分は野球のことしか考えていなかったなぁ〜というのを痛感してしまった。
比較してもしょうがないんですが、周りの人の方が魅力的に思えて初めの1年は劣等感にさいなまれるばかりで過ごしました。何か打ち込めるものを見つけなければと考えていたのですが、雑誌BRUTUSのコーヒー特集を読んでコーヒーに興味を持ち始めていたこともあり、大学2年の春にスターバックスがアルバイトを募集していまして研修制度が充実しているという情報も聞いていたのでやってみることにしました。
富津: 昔からコーヒーはお好きだったんですか?
能城: いえ、コーヒーは苦いだけで全く好きではありませんでしたね(苦笑)興味もそれほどなくて「これが美味しいと言えるようになったら大人なんだろうなぁ」なんて思ってました。
富津: それは私も同じかもしれません(笑)
能城: スターバックスに入った頃も、初めは正直我慢して飲んでいるようなところもあったんですが、勉強していくにつれて生産地のことなども意識するようになり、とてもグローバルな飲み物だと気付いたんです。
今となっては学生ならではの安易な発想なんですが、世界で生産されていて、消費者も世界中にいるコーヒー業界で革命を起こせたら、世界が変わるんじゃないかと考えたのです。
富津: スターバックスで働きながらコーヒーの勉強を続けられていたのですか?
能城: そうですね。ただ、次第に自分のお店を持ちたいと強く思うようになりました。もともとは人とコミュニケーションを取るのが苦手なタイプなんですが、店員として接する場合はスムーズにいくこともあって。お店の人がお客さんに挨拶したり、メニューを聞いたりすることって普通のことじゃないですか?そういう自然な流れでお客さんとコミュニケーションが取れることが快感で、オススメすると喜んでくれたりするのが嬉しいんですよね。コーヒーを通じてお客さんと繋がれるというのは素晴らしいし、どうせなら自分が作ったお店でできるともっと良いなと。
おいしいコーヒーの真実
能城: それから、ほぼ同時期に見た「おいしいコーヒーの真実」というドキュメンタリー映画にも影響を受けました。コーヒーの生産者がとても貧しい生活をしているという内容で、ある種スターバックスのようなコーヒー会社を批判するような姿勢だったのです。
自分の働いている会社が否定されているようで嫌でしたし、それを解決する方法はフェアトレードだと言い切ることにもモヤモヤするものを感じていました。映画に出てくる生産者の舞台はエチオピアだったのですが、もうこのモヤモヤを取るには現地に行って確かめるしか無いと。
今後自分でコーヒー店をやるにしても、生産者が苦しんでいるかもしれないという状況を無視はできませんし、関わる全ての事業者がハッピーでありたいと思いましたので、どうしても真実を知りたいという思いから大学3年の夏にエチオピアに行くことにしました。
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実はこれが初海外で英語もそれほど堪能なわけではなく、知人が現地三日目に合流するということもあってかなり不安でした。しかも、当時エチオピアは政情が不安定で避難勧告もでているような状態でした。それでも、このモヤモヤをどうしても解消しないといけないとの思いで2週間の滞在をしてきました。
現地では実際に生産者の方などにインタビューをしたりしました。現地の人に言わせても「あの映画はかなり昔のエチオピアだよ」とか、映画で貧困を訴えていた生産者の人が実は貧困をウリにビジネスをするような人だと、隣の生産者の方から聞いたりやはり映画に対する不信感は確実なものになっていきました。
一方で、産地が貧しいことも事実であり、これを解決する方法はないかという命題にまた逆戻りしたりしました。
ブレンドコーヒーへの不信感。そして「シングルオリジン」へ
能城: コーヒーの生産・流通について考える中で問題に思うようになったのが「ブレンドコーヒー」です。ブレンドというのはみなさんも普通に頼むコーヒーで馴染み深いものですが、例えば焙煎に失敗してしまったとか、売れ残ってしまったコーヒーを、味に影響がでないように数%だけ混ぜてしまおうとか、融通のきく(販売側に有利な)側面もあります。また、消費者にとってもお値段的に買いやすいというメリットもあって当たり前になっています。
でも実はこれが良くないのではないかと思っていて、ブレンドが当たり前になることで消費者はブレンドがいいのか・焙煎がいいのか・そもそも豆が良いのか分からなくなり、結果生産者を意識しなくなり、より安い商品を求めるようになるのではないかと。
例えば、地方に旅行とか行ってお酒を飲もうとすると、今では日本酒やワインにしても銘柄まで選べるじゃないですか?それぞれの業界の方々の努力もあるとは思うのですがコーヒーでもしっかり生産地や銘柄を選んで買うような文化を根付かせられないかと思うんです。
大量生産・大量消費の時代にできたブレンド文化を続けるのではなく、良い物を分かった上で選んで買うという文化にできれば、生産者にもスポットライトがあたりより品質の良いコーヒーができると思います。
少し前からサードウェーブコーヒーというキーワードも出回っていますが、これもコーヒーの質を高めましょうという流れからきています。ただ、ここでもブレンドされてしまっている場合もあるので、一般消費者に対しては、自分は一切ブレンドせずに「シングルオリジン」を貫こうと考えました。
ちなみに、「シングルオリジン」という言葉も明確に定義が無かったりするのですが、同じ国の別の農園の豆を混ぜていて「ブラジル」などとして売っている場合は「ストレートコーヒー」と呼びます。「シングルオリジン」はさらに細分化して管理しようということなんですが、生産地の地方なのか農園なのかどこまで絞るかは会社によって定義は様々です。
富津: シングルオリジンにすることでメリットはあるのですか?
能城: ロットを細分化することで品質を高く保つことができます。高い品質のものをそのまま相応の価格で販売することで、最も美味しいまま飲むことができます。
例えば高価な良いワインをもらっても「じゃあ、他のワインと混ぜてみよう」とはならないじゃないですか。同じことがコーヒーにも言えるはずなんです。
富津: そもそも生産地で品質の管理ってちゃんとできていたんですか?
能城: まちまちではあるんですが、もちろん厳密に品質管理しようとすればするだけコストがかかってしまうんです。例えば、同じ農園でもこの木はベストな状態だけど、こっちの木は明後日くらいがベストだなと分かっていても、収穫する日を決めてしまったら普通はその日に全部採ってしまうんです。良い品質で収穫できたとして、高く買ってもらえないのであれば生産者としては労力だけ増えた形になってしまうのでやりたがりません。
質の良い物をしっかり評価し購入し、適正価格で販売するところまで形にしないといけないのです。そこを我々でやってやろうと思ったわけですね。
■NOZY COFFEE|シングルオリジンコーヒー専門店
■NOZY COFFEE 木更津店
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NOZY COFFEE 能城政隆氏インタビュー 後編/NOZY COFFEE設立からついに地元出店
インタビュー・文: ヤガー
写真: 白狐
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