富津のみなさまには、富津岬の先に見える人工島として第一海堡・第二海堡はおなじみの存在だと思いますが、国が管理している立ち入り禁止地域であることから実際に島内がどうなっているかを見たことがある人は少ないかもしれません。地元の年配の方からは「昔は引き潮のときに歩いて第一海堡までいけたんだけどなぁ」なんて聞いた事がありますが、今は潮の流れが変わっていますし入島が厳しく制限されています。
2018年に第二海堡を管轄する国土交通省は、観光資源の開発を目的に第二海堡への観光ツアーを認め、複数の旅行会社によるツアーが企画されてきましたが、当初は対岸である横須賀発着のツアーばかりでした。少し前から富津港発着のツアーが開始されたとのことで、今回は「ドラぷらの旅(NEXCO東日本)」さんご協力のもと、第二海堡上陸ツアーに同行させていただきましたので当日の様子を写真付きでたっぷりレポートさせていただきます!
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集合は富津港
出発は富津港からになりますので、普段は漁業関係者のみ立ち入りできるエリアですが案内員さんが誘導してくださったので迷わずたどり着けました。
受付を済ませるとガイドブックなどをいただき、その中には富津市の観光パンフレットや市内のお店の情報なども入っていたので、ぜひツアーの後には富津で買い物や飲食していただけると嬉しいですね。
今回乗船する「Sea Friend 1号」。ツアー客は50名ほどですがスタッフも含め乗船できる規模です。
乗船前に、ツアー中行動を共にする3班に分けられ音声案内を聞くことができる無線イヤホンの事前チェックがありました。各班に1名のガイドさんがつくのですがたくさんの応募者の中から選ばれ研修を受けてからデビューされた「TOKYO BAY Navigator」と呼ばれる精鋭ですので、このツアーの重要な役割を担います。音声OK!乗船するときにオリジナルデザインのペットボトルのお水ももらっていざ旅立ちです。
※ツアー中、特に島内はお手洗いがないので参加前に済ませてくることを強くオススメします。一応船内に1個だけトイレがありました。
※東京湾は比較的波が穏やかですが、それなりに揺れる場合があります。船酔いしやすい方は酔い止め薬を用意した方がいいかもしれません。
船の上も撮影チャンス!
さて、いよいよ船が動き出し第二海堡を目指します。
乗船時間は片道約40分かかりますので実はツアーの大半を占めるわけですが、せっかくですので楽しみたいですよね。船内放送で周辺にみえるランドマークや大型船の解説などをしてくれるので飽きることはありませんが、2階デッキの最前列に座れたので海上からでしか撮れない写真を撮りたいと狙いをさだめました。
まずは、右側に東京電力富津火力発電所が見えるのですが、ちょうど燃料であるLNGを運ぶ大型船がいました。
もしかしたら、この日のベストショット!?
富津岬の明治百年記念展望塔の真上に東京湾観音がくる角度を発見しました。これは海上からでないと絶対撮れない角度なので是非狙ってみてください!
第一海堡の向こうに展望塔が見える角度。これも陸地からは絶対に見えないので貴重です。
そんな楽しい撮影をしていたらあっというまに第二海堡が目の前に現れました。
幸い船酔いしやすい管理人もほとんどダメージなし!いざ上陸です。
上陸〜島内散策
上陸した後は3班で別れて行動します(50人近く参加していますので一度に移動するとしっかり見れませんからね。合理的です)
私が参加した班の見学順で紹介していきますが、班によって順番が異なりますのでご了承ください。
間知石(けんちいし)
まず、着船場の正面に見えた立派な石の護岸ですが、これが「間知石(けんちいし)」と呼ばれる伝統的な技術で積まれたもので、その耐久力の高さで関東大震災でも崩れなかったという代物です。
この後、島内のあちこちで震災の被害がみられたのですが、この間知石の護岸は地震や台風などの自然災害にもびくともせず今に至るんですね。
掩蔽壕(えんぺいごう)
さて、着船場から階段をのぼって右側に移動すると、北側の掩蔽壕(えんぺいごう)にたどり着きました。掩蔽壕とは装備や物資、人員などを敵の攻撃から守るための施設なんですが、特にこのレンガの防波壁の説明がありました。
このレンガが長いものと短いものを使った積み方を「ブラフ積み」というそうですが、特に長いものだけの段と短いものだけの段で積む方法を「イギリス積み」というそうです。
灯台
さらに1段登っていくと、島のシンボル灯台が見えました。
現在も灯台としての役割を果たしています。
こちらは耐久性も考え、FRP(繊維強化プラスチック)で作られているそうで、ノックしてみるとコンクリートや石などとは異なる音がしました。
砲台跡と関東大震災の被害
灯台の周りは見晴らしがよく、周辺は砲台跡になっています。
これは、15cmカノン砲跡でしょうか。鍵型になった穴が特徴的です。
震災で崩れてしまったと思われるコンクリートの塊。
時代によって使われている素材が異なるそうで、この部分は比較的大きな砂利が入っていることが分かります。
西端の掩蔽壕ですが、崩落していて外から地下施設の様子が少し垣間見えます。
こちらも壁はレンガでできているんですね。
南部側まで回り込んできました。
こちらはおそらく地下施設への入り口だろうとのことですが、瓦礫で埋まってしまっています。
崩落した砲台の土台ですが鉄筋が入っていることが分かります。
南側から見た砲台跡の基礎部分が見えます。
土台のコンクリート部分には「FORT NO.2」と記載があります。
中央部砲塔観測台
さて、次は中央部に戻るため坂を登りますが、ここは最近整備されたのか非常に綺麗でした。
ここは第二海堡で最も「映える」といわれているスポット中央部砲塔です。
この観測台は視界の開けた場所に設けられており、地下の指令室や通信室と一体的に機能していたと考えられます。
その形と、空を背景にできるロケーションで人気のフォトスポットでもあるそうです。
松田優作主演映画『蘇える金狼』の重要シーンのロケ地としても知られています。
太陽光発電
島内設備の電源を賄うために太陽光発電が設置されています。
歴史的建造物と近代技術が並んでいるのはちょっと面白いですよね。
太陽光発電のパネルの間が順路になっているので、歩いている他の班の姿を撮りました。
やっぱり何かシュール。
この太陽光パネルの下に、12.7cm高角砲の砲座跡があるのですが、言われないと見逃してしまいそうなので軍事マニアの方は要チェックです。
人工島の植物
さて、軍事施設跡である人工島ですので殺伐とした風景だけかと思っていたのですが気になる植物もいくつかありまして、
こちらはガイドさんからも言及があった「ウチワサボテン」ですが自生していたものではないとのこと。誰がいつ持ち込んだものかはわからないそうです(ロマンありますね〜)
着船場の周辺に多くみられた「ユッカ・グロリオサ」別名アツバキミガヨラン。鋭く分厚い葉っぱが特徴ですが、これ刺さると本当に痛いので気をつけてください。
北側着船場前倉庫
さて、スタート地点に戻ってきて私の班はここで北側着船場前倉庫の説明を受けました。
燃料などを保管した倉庫であると考えられており、海が近いので防水施工もされています。
ツアー冒頭の掩蔽壕でも使われていたイギリス積みのレンガの様子が分かります。
表面が紫色っぽく見えるのは「焼き過ぎ煉瓦」といって、通常のレンガより高温で焼き過ぎになるくらいに焼いた煉瓦で吸水性が少なく、倉庫や防波壁の用途に合うんですね。
帰りの船上も撮影リベンジ
というわけで、盛りだくさんのツアーだったのですが島内にいたのはたったの1時間。必死にガイドを聞きながら写真を撮っているとあっという間です。
帰りも約40分の航行ですが、もし往路で撮ることができなかった写真があったらチャレンジしてみてください!
第一海堡の上に東京湾観音!
ジャンボプールのスライダーと観音様!
富津火力の煙突が重なるところとか!
富津みなと公園の端っこにあるピラミッド型の謎の展望台とかw
喜んでいるのは私だけでしょうかwww
所感
というわけで、無事に帰ってまいりました。
実は曇り〜雨予報で乗船中に多少雨もぱらついたんですがなんとか本降りにならずに済んで良かったです。
今回、初めてツアーに参加したこともありガイドさんの説明をちゃんと聞こうと思っていたら、1時間があっという間でまったく余裕がない感じでした。せっかくのロケーションなのでじっくり写真撮影もしてみたいと思いましたが、それは次回以降のお楽しみですね。
おそらくこういったツアーに参加されるのは軍事マニアかインフラマニアの方々が一番多いとは思いますが、富津や内房の人からすれば「陸から見えていた人工島がこんな風になっているのか!」という答え合わせにもなると思います。
本当に貴重な体験ができるツアーなので、機会があればぜひご参加ください。
ツアー情報
第二海堡上陸ツアーは東京湾海堡ツーリズム機構が運行しており、各旅行会社からツアーが企画されています。
今回ご協力いただいたNEXCO東日本の担当者さんによると、富津港から発着するツアーは今の所NEXCO東日本さんだけのようですので、千葉側から気軽に参加したいという方は富津発着のツアーを探してみてください!
ツアーを探す – 【公式】東京湾海堡ツーリズム機構│「第二海堡」上陸ツーリズム
※毎週のようにツアーが企画されていますが、回によって発着場所や内容がことなりますのでご注意ください!
ツアーの後は、富津観光もお忘れなく!